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第一部 統一思想 第七章 芸術論 : 三 創作と鑑賞 : (三) 鑑賞の要件 |
(1)主体の要件
鑑賞も芸術活動の一つの形態であると同時に授受作用の一つの形態です。ここにも主体である鑑賞者と対象である作品がもたなければならない条件が要求されます。主体の要件を見れば、性相的条件として美を享受(enjoyment)しようとする積極的な関心と、作品を静観(contemplation)または観照(intuition)しようとする態度が必要です。そこには一定の教養、趣味、思想、個性などが備えられなければならず、心情を中心として生心と肉心が調和した心の土台がなくてはなりません。
次に作品のモチーフ(目的)、主題、構想、そして芸術家の思想や作品の時代的社会的背景などに関する理解が必要です。これは芸術家と鑑賞者の一体感(相似性)をさらに高め、鑑賞しながら、主観作用による付加創造を併行するためです。そして、作品を鑑賞することによって、作品の中に宿っている芸術家の構想(性相)と物理的諸要素の統一的な調和(形状)を再び統合するとき、作品の深い意味を味わうようになります。最後に、鑑賞者は健全なる視聴覚の感覚器官、神経、大脳などの身体的(形状的)条件を維持することが、何よりも重要です。
(2)対象の要件
鑑賞において、対象(作品)がもたなければならない要件とは、美の要素すなわち様々な物理的構成要素が創造目的を中心として調和をなしていることです。対象である作品は主体の前に置かれた完成品であるために、それ自体の性相的条件と形状的条件の変更は不可能ですが、作品の選定と主観作用による付加創造を通じて新しい意味を付加することはできます。そのようにして主体に対する相似性を高めることができるのです。したがって作品の陳列や位置・照明などの環境が適切に整えられなければなりません。
次に美の判断に対して見てみます。美は鑑賞者の美に対する追求欲が、作品からくる情的刺激で満たされることによって、判断され決定されます。すなわち美それ自体は客観的にあるものでなく、作品の中にある美の要素が、鑑賞者の情的機能を刺激して、鑑賞者によって美しいと感じられるとき、初めて現実的な美になります。美的判断の場合、認識の照合段階において情的要素が多く作用します。すなわち刺激を受けて「知ること」の代わりに「感じること」が触発されてなされるのです。