第一部 統一思想 第七章 芸術論 : 三 創作と鑑賞 : (二) 創作の要件

 創作には、創作の主体である芸術家がもたなければならない要件、すなわち主体の要件と、対象である作品が備えなければならない要件、すなわち対象の要件があります。そのほかに、創作の技巧、素材、様式なども、創作において主要な要件になります。

 (1)主体の要件
 主体である芸術家はモチーフ、主題、構想の三つの要件をもたなければなりません。創作において、まず芸術家の創作の動機(モチーフ)が必ずあり、そのモチーフに従って作品を作ろうとする創作の目的が立てられます。そして、その目的に従って主題(テーマ)が立てられ、それに従って構想が立てられなければなりません。
 次に、対象意識が確立されなければなりません。芸術家は神様や全体(人類、国家、民族)の前に、対象の立場に立って美の価値を表すことによって、主体である神様や全体を喜ばそうとする活動を行わなければならないためです。そして、全体(主体)のためになそうとする対象意識をもって、創作を行わなければならず、可能な限り、その範囲を極大化するように努力しなければなりません。そのとき最高の主体である神様を喜ばせようとして、神様の栄光を現す姿勢が、対象意識の極致です。
 最後に、芸術家のもっている個性はそれ自体が創作における要件になります。人間は神様の個別相の一つ一つに似るように造られた個性体です。したがって、創作においても、芸術家の個性が作品を通じて表現されなければなりません。創作は芸術家の個性、すなわち神様から賦与された個別相の芸術的表現なのです。

 (2)対象の要件
 作者のモチーフ(目的)、主題、構想などの性相的条件が作品の中によく反映されなければならないというのが、対象である作品がもたなければならない要件です。そのためには、その性相的条件を現すのに最も適した材料を用いる必要があります。そして、その材料を用いて創作するとき、作品の物理的要件である構成要素が最高の調和を表すようにしなければなりません。それが形状的要件です。ここで物理的要素の調和には、線の生動的な律動の調和、形態の粗密の調和、空間の調和、明暗の調和、色彩の調和、音律の調和、絵画における量感の調和、舞踊における動作の調和、線分分割(golden cut)の調和などがあります。

 (3)技巧と素材
 創作とは、芸術において創造性を発揮するものであり、内的四位基台の形成によって立てられた構想に従って、素材を用いて作品を作る外的四位基台の形成過程です。そのとき、外的四位基台においては、モチーフ(目的)を中心に性相(構想)と形状(素材)が授受作用を行いますが、そこに必要な特殊な技術または能力を創作の技巧といいます。そして、素材にも性相的な素材である絵画のモデルなどの作品の表現対象があり、形状的素材である大理石や木材などの表現手段があるのです。前者を題材(subject主題の内容)といい、後者を媒材(medium道具)といいます。

 (4)創作の様式と流派
 様式とは、芸術的表現の方式を意味しますが、創造の二段階構造の中で、特に内的四位基台において構想が形成される方式をいいます。すなわち、モチーフ(目的)が同じでも内的性相(知情意)と内的形状(主題)が異なれば、その結果(構想)も異なって現れます。そのように内的四位基台の中の三つの定着物を立てる様式に従って構想が異なるのであり、自然に作品の種類も異なるようになるのです。歴史的に現れた代表的な様式の流派は理想主義、古典主義、ロマン主義、写実主義、自然主義、象徴主義、印象主義、表現主義、立体主義などでした。
 ところで構想や様式は原則的には、芸術家ごとに、それぞれ差があるにもかかわらず、しばしば共通性をもった様式として現れます。そのような様式の共通性によって、様々な創作の類型が形成されてきたのです。統一芸術論の創作の類型は「統一主義」といいます。それは神様の創造目的中心として、理想主義と現実主義が統一されたものであるためです。すなわち、現実の罪悪世界の中で創造理想世界を憧憬しながら苦難を克服していく、希望に満ちた人間像を描くのが「統一主義」です。また「統一主義」は神様の理想的な愛と歴史的な心情を表現する心情主義でもあります。そこにはロマン主義的な要素も含まれます。