第一部 統一思想 第十一章 方法論 : 二 「統一方法論」から見た従来の方法論 : (二) ゼノンの弁証法(静止法)

 エレア学派のパルメニデスは、存在(einai)とは不変不動で不生不滅であると見ました。このようなパルメニデスの主張を受け継いだゼノンは、すべての物体の運動を否定し、静止している存在だけがあることを論証しようとしました。彼は「飛矢静止論」によって、飛んでいる矢も実は静止しているとまで主張したのです。彼が主張するように、飛ぶ矢がある点で静止しているというとき、その点は実際の空間をもたない数学的(観念的)な点を意味しています。
 しかし実際に矢は一定の時間と空間の中で運動しているのです。したがって、ある点における物体の運動をいうとき、その点がいくら微小で、その時間がいくら短いとしても、一定の時間と空間のもとで運動すると考えなければなりません。そのように見るとき、運動している矢は静止しているのではなく、ある点を通過するとはっきり言うことができるのです。ゼノンはすべてのものが不変不動であり、不生不滅であることを論証しようとしために、詭弁まで用いながら運動や生滅を否定しようとしたのです。ゼノンはヘラクレイトスとは反対に、事物の発展的側面を無視して自己同一的側面をとらえたのです。