第一部　統一思想　第十章 論理学 : 一　「統一論理学」 : （三）　思考過程の二段階と四位基台形成

　（１）悟性的段階と理性的段階
　認識と思考は互いに密接な関係があるために、認識論と論理学は関連性をもって扱わなければなりません。認識論で述べられているように、認識には感性的認識、悟性的認識、理性的認識の三段階があります。この三段階の認識において、思考が営まれるのは悟性的認識と理性的認識の段階です。したがって思考には、悟性的段階の思考と理性的段階の思考があります。前者を悟性的思考といい、感覚を通じて得た知識に基づいて推理する思考をいいます。そして後者を理性的思考といい、感覚的知識を離れて、自由に連想したり、想像する思考をいいます。例えば悟性的思考の特徴は情報を得ながら、あるいは情報に拘束されながら考えるものです。聴講するとき、講義を聴きながら講義と関連した何かを考えれば、その思考は悟性的思考なのです。ところが聴講後に、講義とは関係なく、自由に何かを考えるとすれば、それは理性的思考です。
　悟性的段階と理性的段階において形成される四位基台は、原相構造に似た論理構造です。悟性的段階における思考は、感覚を通じて得られた認識がいったん完了したのち、それに基づいて推理する能力なので、外界の内容と内界の原型が照合されて認識が完結される段階を通過します。そのときの認識構造は内的な自同的（完結的）四位基台です。ところが理性的段階では悟性的段階から得た知識に基づいて、自由に想像を進めて、新しい構想（新生体）を立てる段階なので、このときの思考の構造は内的発展的四位基台です。

　（２）理性的段階の思考の発展
　思考とは、内的性相と内的形状の授受作用でした。内的性相と内的形状の授受作用によって、第一段階のロゴスすなわち思考の結論としての構想（新生体）が形成されます。ところで理性的段階でなされる思考は自由に行われるので、思考が一回で終わる場合もありますが、大体において継続してなされる場合が多いです。その場合、第一段階の内的四位基台形成によって形成されたロゴスすなわち情報は、次の段階の内的形状に含まれるようになります。つまり第一段階で形成されたロゴスは、思考の素材である一つの概念または観念となって、内的形状の中に蓄えられたのち、第二段階の思考のときに、他の多くの素材（観念、概念）とともに動員されます。そのようにして第二段階のロゴスが生じるようになりますが、それがまた必要に応じて内的形状に移されて、次の思考のときに動員されます。そうして第三段階、第四段階、第五段階へと思考が継続されるのです。これが理性的段階における四位基台の形成の過程であり、これを思考の螺旋形の発展といいます。

　（３）思考の基本形式
　「統一論理学」において、思考の形式は存在の形式に対応する形式です。なぜならば、宇宙の構成要素と人間の肉身の構成要素は対応しており、人間の肉身（存在）と心（思惟）も互いに対応しているためです。認識論で述べられているように、末端の組織や細胞の次元において、それらの存在形式は意識（生命）に反映されて形式像をなしていますが、その形式像が思考に一定の規定を与えるところの思惟形式（思考形式）になります。論理学では思惟形式を範疇といいますが、範疇とは概念と概念の包摂過程において、それ以上、包摂されることのない最上位の概念をいいます。
　したがって範疇は下位のすべての種類の概念を包摂していますが、他のどんな概念とも取り換えることのできない最も広い範囲を指し示す概念をいいます。一般的にある思想の特徴はその範疇に従って決定されます。「統一思想」において、四位基台および授受作用を基盤にして範疇が立てられますが、それを第一範疇といいます。「統一思想」の第一範疇は存在形式と同じなのです。そして、他の哲学でいう範疇は、「統一思想」の第二範疇に属しますが、その数には制限がありません。第一範疇と第二範疇を列挙すれば、次のようになります。
　第一範疇
　�‖減澆販蓮´∪�相と形状　�Ｍ枩�と陰性　�ぜ臑里搬仂檗´グ銘屬板蠱紂´ι塋僂畔儔宗´Ш醉僂鳩覯漫´┿�間と空間　��数理と原則　��有限と無限
　第二範疇
　�ー舛販漫´�内容と形式　�Ｋ楴舛噺従檗´じ彊�と結果　�チ澗里噺賃痢´γ蠑櫃閥饌痢´Ъ詑里搬粟�　……

　（４）思考の基本法則
　形式論理学において、思考の根本原理は同一律、矛盾律、排中律、充足理由律でした。しかし「統一思想」から見るとき、それよりもっと基本的な法則があります。それが「授受法」です。三段論法は形式論理学の形式の一つでもある推理形式であって、大前提と小前提から必然的な結論を引き出す論証です。そのとき結論は、目的を中心とした大前提と小前提との授受作用（対比）の結果として得られるのです。同一律の場合も同じです。「この花はバラである」という命題は、「この花」と「バラ」を心の中で比較してみて、それらが一致したので「……は……である」と判断したのです。比較するということは、対比形の授受作用を意味します。したがって同一律も「授受法」に基づいていることが分かります。矛盾律の場合も同じです。このような例から見て、形式論理学の形式や法則は、みな「授受法」の基盤の上に立てられていることを知ることができます。
　ところで法則や形式を離れた思考の自由というものはないのでしょうか。思考の自由とは、法則や形式に反するものではなく、それから離れずに、自由に選択する「思考の選択の自由」なのです。例えば愛の実現において、共通なる目的や方向を立て、愛の表現方法を異にするのと同じです。すなわち選択の自由によって、各自が必要な目的や方向を自由に決定することができるのです。目的や方向に関する選択の自由という場合、その自由な思考はいかにしてなされるのでしょうか。それは思考（内的授受作用）において、霊的統覚が内的形状の観念、概念の複合や連合を自由に選択することによって行うのです。したがって思考の自由はまさに構想の自由なのです。この構想（思考）の自由は理性の自由性に起因するものです。