第一部 統一思想 第九章 認識論 : 六 認識過程と身体的条件 : (三) 原型の形成と生理的過程

 すでに述べられているように、原映像の対応源は細胞や組織の属性(内容)であり、関係像の対応源はその要素間の相互関係でした。その原映像と関係像は細胞や組織の次元で形成されたものですから、それぞれ末端原映像と末端関係像ということができます。これに対して認識の悟性段階において現れる原映像と関係像を中枢原映像と中枢関係像ということができます。末端原映像と末端関係像が神経を通じて上位中枢に至る過程において、中枢神経系の各中枢において、選別、複合、連合されて、中枢原映像と中枢関係像になるのです。この中枢関係像が大脳皮質に至って思惟形式になります。なお、そのとき中枢神経系の各位は、それぞれがその位置における原映像と関係像を保管しているのです。
 認識の原型を構成している、もう一つのものは経験的映像(または経験的観念)です。それはそれまでの経験において得られた映像(観念)が、記憶中枢に保管されているものであって、それもその後の認識において原型の一部になるのです。それを「経験的原型」といい、それに対して元来の原型を「先天的原型」(または「原初的原型」)といいます。この二つの形態の原型を生理学者の表現を借りれば、「先天的原型」は「遺伝的記憶」に相当し、「経験的原型」は経験によって「獲得した記憶」に相当するといえます。