第一部 統一思想 第九章 認識論 : 六 認識過程と身体的条件 : (一) 心理作用と生理作用の並行

 人間は心と体の二重的存在であり、人体を構成している細胞、組織、器官なども、すべて心的要素と物質的要素の統一体になっています。それだけでなく、人間のすべての活動や作用も二重的であり、そこには必ず心理作用と生理作用が統一的に並行してなされています。したがって「統一思想」から見れば、認識作用も必ず心理的過程と生理的過程が並行しているのです。例えば、心と脳の授受作用によって精神作用(意識作用)が現れるのです。
 このような心理的過程と生理的過程の並行は、情報伝達において対応関係として現れます。人間の体は常に外部や内部からいろいろな情報を受け入れたのち、それに対応する作用が行われています。目、耳、皮膚など受容器(感覚器)が受け入れた刺激はインパルスになり、神経線維の求心路を通じて中枢神経に至ります。中枢神経はその情報を処理して指令を送りますが、その指令がインパルスとして神経線維の遠心路を通じて、筋肉、分泌腺などの効果器に伝達され、反応を起こします。「統一思想」では、この情報伝達に対する生理的過程の背後には、必ず意識過程が並行していると見ます。すなわち神経線維における活動電流や、シナプス(synapse 神経細胞の連結部)における化学物質の移動の背後に、細胞次元の原意識が作用しており、この原意識が情報の内容を覚知しながら、情報を中枢に伝達していると見るのです。
 次に、現代のサイバネティックス理論と関連させることにより、細胞の生理的(情報伝達)作用にも意識現象が並行しているということを知ることができます。サイバネティックスとは、機械における情報の伝達と制御の自動化方式をいいます。生物において、刺激と反応が感覚器官、中枢神経、末梢神経、筋肉に連結されていますが、これが生物におけるサイバネティックス現象です。しかし生物の場合、その自動現象は機械的な自動操作ではなく、その生物がもっている自律性による自律的な操作です。一つの細胞においても、細胞質から核への情報の伝達と、これに対する核の反応が絶えず自律的に繰り返されながら、細胞の生存、増殖などが行われています。このようなサイバネティックス現象を通じて、一つの細胞においても、自律性(意識現象)が作用していることを発見することができます。この細胞における自律性がまさに生命であり、原意識です。そして細胞がもっている情報が原映像です。