第八章　歴史論 : 三　復帰の法則 : （五）　偽と真の先後の法則

　これは真なるものが現れる前に偽なるものが先に現れるという法則です。サタンは人間始祖を堕落せしめることによって、神様が創造された被造世界を占有しました。それゆえサタンは神様に先立って、神様のなさる摂理をまねて、原理型の非原理世界をつくってきたのです。神様はアダムが責任分担を果たさないで堕落してしまったために、サタンが非原理世界を造るのを許さざるをえませんでした。その代わりに神様は、サタンのあとを追いながら、サタンが造った非原理世界を原理世界に取り戻す摂理を行ってきたのです。そしてサタンによる非原理世界は、たとえ繁栄を見せたとしても、それは偽なるものであるがゆえに、その繁栄は一時的であって、神様の摂理が進展するにつれて、必ず崩壊していかざるをえなかったのです。
　復帰摂理の究極的目的は、地上に神様を中心とした創造理想の実現した世界、すなわち全世界が一つに統一された国家を実現することでした。それがすなわち神様（神様を代身した人類の真の父母様）を最高の主権者として侍る神様の国であり、地上天国であって、それはメシヤが降臨することによって初めて実現されることになっていました。しかしサタンはそのような神様の摂理を知っていたために、その摂理の意図を先取りして、メシヤ降臨（または再降臨）の前に、サタン側のメシヤ的な人物を立てて、サタン側の理想国家をつくろうと企てたのです。そのために偽のメシヤと偽の統一世界が先に現れたのです。
　イエス様が来られる前に現れたローマ帝国がその良い例です。ローマにカエサル（ジュリアス・シーザー）が現れて、全ガリアを征服して属州に加え、ローマの統一を成し遂げました。（前45年）。彼が暗殺されると、オクタヴィアヌス（アウグストゥス）はローマの内乱を収拾し（前31年）、全地中海を統一して、文字通りの世界帝国を実現しました。ローマ帝国の繁栄は「ローマの平和」（Pax Romana）と言われ、約２世紀間続いたのです。カエサルやオクタヴィアヌスはサタン側のメシヤ的人物でした。彼らは真のメシヤ（イエス様）が降臨して、永遠なる愛と平和と繁栄の統一世界を成されるに先立って、偽の平和と繁栄の統一世界をつくりあげたのです。ところが結局、イエス様は使命未完成のまま十字架で亡くなられたので、真の統一世界、真の理想世界は実際には現れなかったのです。
　再臨の時にも、この法則に従って、偽の再臨主と偽の統一世界が、再臨の摂理に先立って現れます。それがスターリンと共産主義世界であったのです。事実、スターリンは当時、人類の太陽を自認し、メシヤのごとく崇められ、共産主義による世界統一を目標としたのです。スターリンは1953年に死去しましたが、摂理的に見れば、そのときが再臨摂理の公式的路程が出発する時でした。そして国際共産主義のその後の分裂は、偽の統一世界の崩壊と、メシヤによる真の世界統一の実現の進展を見せたのです。