第四章 価値論 : 三 価値の種類 :

 性相的価値
 価値とは、主体の欲望を充足させる対象の性質です。性相と形状の二重的存在である人間の欲望には性相的欲望と形状的欲望があるので、価値にも性相的欲望を充足させる性相的価値と形状的欲望を充足させる形状的価値があります。性相的欲望を充足させる性相的価値は真美善と愛ですが、実は、愛は価値そのものというよりは真美善の価値の基盤です。真美善は、心の三機能である知情意に対応する価値です。すなわち主体が対象のもつ価値的要素を評価するとき、知情意の三機能に従って、それぞれ異なるものとして判断するのが真美善の価値なのです。

 形状的価値
 一方、形状的欲望を充足させる価値とは、衣食住の生活資料の価値、すなわち物質的価値(商品価値)のことをいいます。物質的価値は肉身生活のための価値であり、肉心の欲望を充足させる価値です。肉身の生活は、霊人体を成長せしめ、三大祝福を完成せしめるための土台になっているために、形状的価値は性相的価値の実現に際して必要条件となっています。
 ここで愛は真美善の価値の基盤であるということについて、具体的に述べられています。主体が対象を愛すれば愛するほど、また対象が主体を愛すれば愛するほど、主体にとって対象は、いっそう真に、美しく、善に見えます。例えば父母が子女を愛するほど、また子女が父母を愛するほど、父母にとって子女は美しく見えます。そして子女が美しく見えれば、父母は子女をもっと愛したくなるのです。真と善においても同じです。父母が子女を愛するほど、また子女が父母を愛するほど、子女はもっと真に、また善に見えます。すなわち愛を土台にして真美善が成立するのです。もちろん愛なしに真美善が感じられるときもあります。しかし、厳密にいえば、そのときにも実は無意識のうちに、主体の潜在意識の中に愛が宿っているのです。
 そのような愛は価値の源泉であり、基盤です。愛がなければ真なる価値は現れません。したがって、私たちが神様の心情を体恤し、愛の生活をするならば、今までに経験したものより、はるかに輝かしい価値を体験し、実現することができるようになるのです。
 以上、価値には性相的価値と形状的価値があるということを明らかにしましたが、本価値論では、主として性相的価値を扱います。