第２章　死と霊界 : 第二節　死に対する理解 : 7.　霊界に入るとき

（１）死が差し迫ったとき
　人生の勝敗は、何十年もの期間で決定されるのではありません。それは一瞬に決定されるのです。
　私たちの人生を見ても、皆さんが生まれるその瞬間は、長い時間ではありません。もちろん、生まれる前までの腹中の時期がありますが、その腹中の１０か月という期間は、出生する一瞬のための準備期間です。ところで、１０か月間、いくら準備したとしても、生まれる決定的な一瞬をうまく越えられなければ、その赤ん坊は悲運の運命を迎えるようになります。
　１０か月期間を安全な生命体として絶えず育ててきたのは、生まれるその一瞬を飾るためです。言い換えれば、出生を見通す目的の一瞬のために、腹中時代があるのです。それゆえ、腹中時代がいくら立派だったとしても、生まれる一瞬に誤れば、悲運の結果にならざるを得ないのです。

　この地上に生まれて、運命の瞬間を迎える最期の場で過去を悔いる人がいるなら、その人の心には、過去のすべての事実が映像として過ぎていくでしょう。これこれこういう人だということを、誰が教えてくれなくても自ら分かるでしょう。先祖から受け継いだ生命体をもって、今まで因縁づいた環境や残しておいた事情など、過去のすべてが一生の最期の瞬間に、自分の心に映像として現れるでしょう。
　その中で、「真があった、自分の生命よりも貴い何かを残した」という人がいるなら、彼はたとえこの地に生まれて死んでも、かいある一時を残す人になるでしょう。しかし、「生まれて死ぬこの一生の行路が、通行人のようにただ通り過ぎるものだった」という人もいるのです。そのような人が過去の事情を回想してみるとき、そのすべてが頭を振った回想したくないものだったなら悲惨です。過去を回想すれば回想するほど、自分の顔は歓喜にあふれ、自分のすべての問題が理想に浸ることができるなら、死の恐怖も彼には慰労の一場面として飾られるでしょう。
　このようなことを見るとき、過去を回想する瞬間が恐怖の瞬間でなく、他の何かを残したなら、彼の過去も死なないのであり、現実も死なないものとして現れるでしょう。そうできる過去をもった人は、必ず民族が従ってくることができる因縁をもった人であり、世界万民がついてこざるを得ない因縁を残した人だと見ることができます。
　では、それはどのような事情があるのでしょうか。ある民族に当面した問題を解決することができない悲惨で非情な時があるとき、その瞬間を自分が責任をもって解決するために命を懸けてそこにぶつかったときがあったなら、それはその過ぎ去ったことで忘れられない一時であるでしょう。
　生涯路程で、自分のために死の場まで行くことより、兄弟なら兄弟、親族なら親族、他人なら他人のために、自分の命を捧げて彼らを救ったなら、彼らを救うために問題とぶつかったときがあったなら、そのような事実が最後の運命の場で、彼の心の線上に映像として現れ得るということになるでしょう。いくら自分を中心とした幸福な時があり、数多くの群衆から歓迎されて、自分が光栄にたたえられた聖なる時があったとしても、それはその瞬間には効力を発揮できないようになっています。
　善であったか、真になったか、神様の前に一人立つことができたかという問題について見るとき、真と善は自分から始まり、自分に終わるのではありません。自分から始まり人に結果を結ばせるとか、人によって始まって自分に結果をもたらすことができてこそ、善になり得るのです。原理で、天地のすべての存在は、与えて受ける因縁を経なければならないというのと同じです。
　過去の生活が与える生活だったなら、死の道でも恐怖がないでしょう。人のためにすべて与えて犠牲になり、真に近い生活をしながら人のために涙を流し、自分の命も人のために投入し、自分の願いも人のためのものなので、自分の脈拍から流れ出るすべての生命力を引き集めて、人のために投入したとするなら、その過去は輝いていることでしょう。
　そのような過去を懐かしがりながら、民族を思うようになるとき、希望の民族はこのような民族であるべきだという結論が出てくるでしょう。彼がそのような過去を懐かしがるようになるとき、人のために犠牲になり、希望する本然の善は、こうであるべきだという決定を下すことができるのです。「私がそのために戦ってきた過去があるから、必然的にそうすることができる未来がなければならない」という内容をもって神様の前に行くとき、その内容は、自分の永遠の生命の基盤になります。
　聖賢が行く道と、凡人が行く道は違います。聖賢は、歴史と共に生きようとし、世界と共に生きようとし、未来と共に生きようとした人です。しかし、凡人は自分のために生きようとし、世界も自分のためにあるようにしようとした人です。

（２）霊界に入るとき
　皆さんは、天国に行くときに、礼物としてもっていくものがあるのでしょうか。霊界に行けば、殉教した功臣たちが前にずっと並んでいるのに、彼らの前に、皆さんがもっていいた風呂敷を開いておくことができるのでしょうか。皆さんはどのような苦労をしたのでしょうか。それだけの苦労もしないで、どうして国のため、世界のためにすると言いますか。「苦労をしたにはしましたが、私は苦労したと思いません」。それでこそ同然なのです。まだ行くべき道が残っています。霊界に行って風呂敷を開いておいて「これは一生の間、私が準備した贈り物なのでお受けくださいませ」と言うことができなければならないのです。女性たちが嫁に行くときは一包みずつもっていきながら、天国に行くときはひょいひょいと体だけで行くことができるのでしょうか。

　皆さん自身、自主性をもたない人は霊界に入れません。霊界にも霊界なりの世界があり、国があり、民族があり、家庭があり、個人がいます。個人を中心として見るとき、自分はそこで絶対的に必要な存在だ、と言うことができる自主性がなくては入れない所が天国です。家庭を中心として見るときも、民族を中心として見るときも、やはり自分が絶対的に必要だと言うことができる、そのような自主性がなければなりません。そこで自分が絶対的に必要だという自主性があってこそ、行くことができる所が天国です。

　霊界では、天地というもの、地球というものは、ほこりの一点のようなものです。霊界はどれほど広大かしれません。時空を超越した無限の世界です。そして、「ある時代にこれこれこういう心情をもって、地上で生まれて暮らして行った人がいれば、ここに直接出てきてみろ！」と言えば、瞬く間に現れます。そのような直感的感覚が現実化する世界です。
　一度に１００名の宴会をするといっても、それも問題がありません。「私がこのような理想的な愛の喜びをみなに分けたくて晩餐会をもとうと思いますが、女性はこのような服、男性はこのような服を着て現れろ！」と言えば、すぐに現れます。食事も、果物も問題ありません。瞬く間に願うとおりに現れます。そして、お腹がいっぱいになれば、残ったものはどのようになるのでしょうか。
　そこでは炊事場もありませんが、何の心配もする必要がありません。そこには食糧を作る工場もなく、自動車を造る工場も、何もありません。花は、いろいろな花があります。家も、愛の心情の基準に相応する、そのような家を自分が願うとおりに、いくらでも造ることができます。

　凡人は過去を思えば暗黒ですが、聖人は過去を思えば光明です。その光明は何でしょうか。それは、自分のためのものではなく、希望の民族を描き出すことができるからです。それゆえに希望の天国があるなら、その天国は彼らによって出発を見なければならないのです。それが天国です。
　皆さんは、見るからに険しい環境を備えたこの堕落圏内で自分自身が行く姿を図表に書いてみるようになるとき、１年はこのように行き、１年はあのように行くだろう、あるいは１０年はこのように行き、また１０年はあのように行くだろうと、自分なりに一生の行路を計画しながら高低を予測するでしょう。その高低が、自分を中心として�發�なったり、低くなったりしたという人は、最後の運命を迎えるようになるとき、自分のために、人を犠牲にしたそのすべてが、自分をがんじがらめにするでしょう。

　皆さんが「７０歳になっても私はこのように行く」ということを一度考えてみたでしょうか。「８０歳になって死ぬ瞬間にも、私はこのように行く」ということを考えてみたでしょうか。死ぬ場でも、「私はこのように歴史を明らかにし、今までこの時代にこのようなことをし、これからもこのようなことをすることができる私が死ぬが、お前たちが代わりにしてくれ」と言える証拠物を提示できなければなりません。
　それを言葉だけで言ってはいけません。皆さんが死んだあとに、人々がしがみついて涙を流して、「そうだとも、そうだとも」と言うようでなければなりません。

（３）霊界の手続に必要な証明書
　皆さんは、最初にどこで証明書をもらってきますか。「私はこのようになった。このようなことをした。これが勝利の証明書だ」と言い得る証明書をもらうべきでしょうか。そのような証明書を自分自身が書くことはできません。では、誰が書くでしょうか。初めには、サタンが書きます。神様は書くことができません。サタンから、その勝利の証明書をもらわなければいけないというのです。
　イエス様は、それをよく知っておられました。それで、３年の公生涯路程の出発のときに、４０日間サタンを呼び出して証明書をもらう戦いをされました。それが三大試練です。イエス様が三大試練を勝利すると、サタンが「あなたは民族的に勝利しています。ですから、私が証明書を書かざるを得ません。そうでなければ、私の活動舞台をすべて天の側にすぐ捧げなければならないためです」と言ったのです。
　それゆえ皆さんは、まずサタンに証明書をもらい、イエス様の証明書をもらわなければなりません。その次に、神様の証明書をもらわなければなりません。この三つの証明書が必要です。